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ひとしきり盛り上がった後、恵子はふと壁掛け時計に目をやった。
「あら、もうお昼ね。ご飯でも食べましょ! 今、支度するわね。」
そう言って立ち上がると、洋子も手伝うために席を立った。
何も気付かず今まで騒いでいたが、雅子は、志五人の姿が見えないことに気付き、
尋ねてみた。
「あの子はどこに居るの? 遊びにでも行ってるの?」
雅子のその言葉に、志五人の存在をすっかり忘れていた恵子も、やっと気付いた。
「あっ、そう言えばそうね。 すっかり忘れてたけど姿が見えないわね。
洋子、志五人が何処に居るか知らない?」
洋子は二人の会話を、うっすらと微笑みながら聞いていた。
洋子だけが志五人の居場所を知っていた。
と言うよりも、これは、洋子自身が仕掛けた事だった。
「志五人なら知ってるよ。 そこだよ!」
洋子は、雅子が完全にリラックスして座っているソファーを指差して言った。
指を指された雅子は、何を言っているのか理解できなかった。
「えっ? そこって何処よ?」
雅子は、居るはずもないソファーの横や背もたれの後ろ側を探してみるが、
志五人の姿は見つけられなかった。
「え? 何処よ? 全然分かんない!」
雅子は座ったまま、身を屈めながら数センチしかないソファーの下も覗いてみた。
しかし、たった数センチでは、いくら子供でも隠れられないことは、
考えなくても十分に分かる程度の隙間だった。
それでもなお、キョロキョロと辺りを見渡し探している雅子の顔は、
不安な表情へと徐々に変わっていった。
「ねえ、志五人は何処なの?」
洋子は、恵子の手伝いを中断し、雅子が座っているソファーに歩み寄った。
その様子を見ていた恵子も、包丁を握る手も休め興味深々に二人を見つめていた。
洋子は、おもむろに雅子の隣に座り、今現在、
自分達二人が座っているソファーのクッションを、
人差し指でチョンチョンと軽く突っついて見せた。
「志五人はここ。って言うより、『コレ!』 って言った方が良いかも・・。」
雅子は、そんな洋子の言葉を聞いても全く理解できなかった。
しかし恵子は、洋子との二人の普段の生活習慣からして、
志五人が何処に居て、どういう状態なのかが、すぐにピン!と来た。
「あんた、まさか!」
思わず発した恵子の言葉に、洋子はニッコリ微笑んで答えた。
「そうだよ! お母さんが今思ってる通り!」
洋子の思惑が理解出来た恵子もまた、ソファーに座っている雅子に歩み寄り、
二人に混ざって一緒に座った。そして、ゆっくりとした口調で雅子に教える事にした。
「私は分かったわ。教えてあげる! じゃぁ、ヒントね!
さっき洋子がパソコンで見せてくれた物、覚えてる?
大勢の素敵な女性が、一人の哀れな男を押し潰している画像を!」
その言葉を聞いて、雅子はさすがにハっと気付いた。
と、同時に驚いた雅子は、勢いよくソファーから飛び跳ねるように立ち上がると、
くるりと振り向き、二人に問い正した。
「ひょっとして、志五人はソファーの中なの?」
恵子はニッコリ微笑み、一方、洋子は茶目っ気たっぷりに、
屈託のない笑顔で右手を高く上げ、
「せ~か~いっ!!」 と言って見せた。
恵子と洋子の二人は、雅子に続いてゆっくりと立ち上がり、
三人でソファーの方に振り向き、じっと見つめた。
では、「公開しま~す!!」
そう言って洋子は、三人掛けソファーの三つのクッションを床に放り投げ、
更に、その下に敷いてある8cm程度の厚めのスポンジをめくって見せた。
そこに現れたのは、志五人が誕生日に買って貰った束縛具に、
完全に拘束された志五人の細く弱々しい姿が現われた。
普段の習慣に慣れている恵子はそうでもないが、
この光景に一番驚いたのは何も知らない雅子である。
「うっそ~!!」
雅子はショックで暫く志五人を見つめたままだった。
雅子の目に映ったその姿は、
まぎれもない、たった5歳の幼い子供である。