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シート3

ひとしきり盛り上がった後、恵子はふと壁掛け時計に目をやった。

「あら、もうお昼ね。ご飯でも食べましょ! 今、支度するわね。」
そう言って立ち上がると、洋子も手伝うために席を立った。

何も気付かず今まで騒いでいたが、雅子は、志五人の姿が見えないことに気付き、
尋ねてみた。

「あの子はどこに居るの? 遊びにでも行ってるの?」

雅子のその言葉に、志五人の存在をすっかり忘れていた恵子も、やっと気付いた。

「あっ、そう言えばそうね。 すっかり忘れてたけど姿が見えないわね。
洋子、志五人が何処に居るか知らない?」

洋子は二人の会話を、うっすらと微笑みながら聞いていた。

洋子だけが志五人の居場所を知っていた。
と言うよりも、これは、洋子自身が仕掛けた事だった。

「志五人なら知ってるよ。 そこだよ!」

洋子は、雅子が完全にリラックスして座っているソファーを指差して言った。
指を指された雅子は、何を言っているのか理解できなかった。

「えっ? そこって何処よ?」

雅子は、居るはずもないソファーの横や背もたれの後ろ側を探してみるが、
志五人の姿は見つけられなかった。

「え? 何処よ? 全然分かんない!」

雅子は座ったまま、身を屈めながら数センチしかないソファーの下も覗いてみた。
しかし、たった数センチでは、いくら子供でも隠れられないことは、
考えなくても十分に分かる程度の隙間だった。


それでもなお、キョロキョロと辺りを見渡し探している雅子の顔は、
不安な表情へと徐々に変わっていった。

「ねえ、志五人は何処なの?」

洋子は、恵子の手伝いを中断し、雅子が座っているソファーに歩み寄った。
その様子を見ていた恵子も、包丁を握る手も休め興味深々に二人を見つめていた。

洋子は、おもむろに雅子の隣に座り、今現在、
自分達二人が座っているソファーのクッションを、
人差し指でチョンチョンと軽く突っついて見せた。

「志五人はここ。って言うより、『コレ!』 って言った方が良いかも・・。」
雅子は、そんな洋子の言葉を聞いても全く理解できなかった。

しかし恵子は、洋子との二人の普段の生活習慣からして、
志五人が何処に居て、どういう状態なのかが、すぐにピン!と来た。

「あんた、まさか!」
思わず発した恵子の言葉に、洋子はニッコリ微笑んで答えた。

「そうだよ! お母さんが今思ってる通り!」

洋子の思惑が理解出来た恵子もまた、ソファーに座っている雅子に歩み寄り、
二人に混ざって一緒に座った。そして、ゆっくりとした口調で雅子に教える事にした。

「私は分かったわ。教えてあげる! じゃぁ、ヒントね! 
さっき洋子がパソコンで見せてくれた物、覚えてる? 
大勢の素敵な女性が、一人の哀れな男を押し潰している画像を!」

その言葉を聞いて、雅子はさすがにハっと気付いた。
と、同時に驚いた雅子は、勢いよくソファーから飛び跳ねるように立ち上がると、
くるりと振り向き、二人に問い正した。



「ひょっとして、志五人はソファーの中なの?」

恵子はニッコリ微笑み、一方、洋子は茶目っ気たっぷりに、
屈託のない笑顔で右手を高く上げ、

「せ~か~いっ!!」 と言って見せた。

恵子と洋子の二人は、雅子に続いてゆっくりと立ち上がり、
三人でソファーの方に振り向き、じっと見つめた。

では、「公開しま~す!!」
そう言って洋子は、三人掛けソファーの三つのクッションを床に放り投げ、
更に、その下に敷いてある8cm程度の厚めのスポンジをめくって見せた。

そこに現れたのは、志五人が誕生日に買って貰った束縛具に、
完全に拘束された志五人の細く弱々しい姿が現われた。

普段の習慣に慣れている恵子はそうでもないが、
この光景に一番驚いたのは何も知らない雅子である。

「うっそ~!!」

雅子はショックで暫く志五人を見つめたままだった。


雅子の目に映ったその姿は、

まぎれもない、たった5歳の幼い子供である。


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